私の履歴書⑤ 大口契約へ

1枚の返信ハガキが4万件の契約に

 個別訪問が出来なかった私は、チラシを作り団地のポストに返信付きハガキを撒いて歩いたが、其れも摘発されるのではないかと恐ろしく、夜中の2時3時に撒いたもので有る。
 戻って来たハガキの1枚が、大手企業に勤めている方からのものだった。肝心の保険は保険料が高いと断られた。団体契約をしたら割引きが適用出来るから組合を紹介してほしいと提案したが、私は経営者側だからと断られたので組合の場所だけ聞いてその場は別れた。
 造船所にいた頃、労働組合と会社の間に入って労使交渉の経験があったので何となく組合の立場が分かっていて、直ぐ組合の事務所を訪ねた。不思議に自動車セールス時代のような個別訪問の抵抗は無かった。
 偶々、書記長さんの自動車保険が切れているラッキーに恵まれ即契約して頂き、傷害保険の団体契約まで頂けた。
 其処を拠点に個別に本部の有る大阪の一工場を紹介され団体傷害保険を任せて貰えたが、此処で満足すること無く、この壮大な組織に売り込める商品が出るだろうと時を待った。
 ちょうど其処に外資系保険会社の「がん保険」が出て、週刊誌の小さな記事を見て直ぐに新宿の本社を訪ねて行った。直ぐ代理店契約出来るものと思ったが、その頃は会社形態が法人で無ければ駄目だとか難癖をつけられ数回通ったが許可してくれず、AIUから移って役員になっていたO氏に頼んだら直ぐに許可になった。
 大手企業の担当者から信頼を得る事が出来たのをきっかけに、がん保険一本でやる事に決め、AIUは他の代理店に譲った。
 先づ全国に100以上有る工場を1つずつ開拓すべく、工場の名簿を手に入れ紹介も無しで訪問し、如何にこの保険が個人に必要かを説いて回った。今のように個人情報保護法がない時代の事である。
 当時金も無かったので、検討しておいて下さいではなく、直ぐ加入したい人が大勢居ますので1回目は来月募集させて下さい、チラシを撒くだけでは効果が無いから社員名簿をお借りします、とその日の内に社員名簿と募集スケジュールを決めて来た。凄いと思うのは訪問した所は1ヶ所以外全て成功した事で有る。当然の如く、組合員の為の組合活動の一環と訴え続けた。

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